野焼きと放牧が阿蘇の宝を守る。

基本データ
・所在地:南阿蘇村
・構成員:7名(有畜農家数)
・飼養形態:繁殖
・飼養頭数:放牧頭数60頭
・飼養品種:褐毛和種

 

 

 

 

南阿蘇村の北東部にあり、南北に細長い地形が特徴の下磧牧野。
組合長を務める郷利治さんに下磧牧野の”いま”について話を伺った。現在の組合員の状況を伺うと、「僕がしなくなれば、(牧野の管理を)する者がいなくなるかもしれない。後継者がほしい。」と語った。

ここ下磧牧野組合でも、後継者不足が喫緊の課題となっているのが現状。
以前は、年間を通じて放牧をしており、野焼きの間は、野焼きを行わない上部で放牧を実施していた。現在は、1月末まで放牧を行い、2月に行う野焼きに備えて畜舎へおろすのだという。今年度も野焼きを実施。新芽が出始めた頃に、また放牧を再開させる。

そんな中でも、野焼きの際には、組合員やその家族らが40人程集まり、みんなで作業を行う。郷さんは、「野焼き作業の時は特に区民、その家族が本当に最大の協力者なんだ。」だと語る。
また、時代に合わせてうまく対応できたことが、下磧牧野の強みだという。
最近では、ICT導入による作業軽減も検討されている。郷さんは、ICT導入については、費用面や操作技術の観点が懸念点としてあるとして、「誰でも使えるようになると(いいな)。」ともおっしゃった。

草原の維持管理において最も重要だとも言える野焼き。
草原を守るためにも、郷さんを含め組合員は責任を持って、牧野を管理している。
若い人の中には、放牧を手間だと考えるものも少なくない。その件について尋ねると、郷さんは、「放牧をすると、えさ代も安くなるし、小屋がいらない、いいことがたくさんある。」と語り、続いて、牛たちを集めることが大変だと思う若者もいるという話をすると、「一頭一頭集めていては大変。時間を決めて、エサを置き、立っておくと、自然と寄ってくるもんだ。」と笑って語った。

阿蘇の草原は、牛を放牧することにより、牛たちが草を食べ、守られている。
放牧を行うことで、畜産農家の負担軽減が図れるだけでなく、阿蘇のかけがえのない宝を守ることにつながる。
この価値や魅力を、多くの人に届ける必要がある。

また、下磧牧野は、標高1,200mから水を引いている。阿蘇のおいしい水を飲み、のびのび育つ牛たちは、郷さんがいると、近づいてくる。とても愛らしかった。

郷さんの声が聞こえ駆け寄る牛たち

牧野内に広がるススキ

水飲み場で水を飲む牛